黒い砂②

覚えてますか、まだこの連載生きてますよ?


  よそう、危険だ…
そう何度も言った。しかしヤツは聞き入れなかった。その結果として今オレ達は此処にいる。また今、生暖かい風が頬をなでてどこまでも真っ直ぐな一本道を砂とともに吹き抜けた。暖かいはず、なのに何故か先刻より何かしら薄ら寒い。
  夜の砂丘を見に行こう
今となりにいるヤツがそう言ったのがすべての始まりだった。…ヤツと目が合う、知らず睨んでかしてたのだろう、こちらの顔を見、瞳孔の揺らぐとともにオレとは反対側の茂みに目をやった。オレも反省半分、視線を九〇度右、正面に戻す。
話はざっと一時間前に遡る。チェックインや晩飯を済ませ、風呂上りの少し火照った身体を効きの悪い冷房に向けているときのことだ。ヤツは突然言い出した。「夜の砂丘を見に行こう」
夜には途切れ途切れに電燈があるだけ、ひたすらにまっすぐな宿舎前の道は東西に伸び、そのどちらからでも砂丘へと入れるようになっている。と、ロビーに在った地図は指している。距離等を考慮し、しぶしぶながらも携帯電話の灯りを頼りにオレ達は一路、西へと歩を進めたのだった。七月二六日二三時四七分、国民宿舎「砂の杜」出発。