2006-12-10 久々に・・ VSS title ガードレールの切れ目(NO.39) もう七月も末なのに、ここではまだウグイスが鳴いている その声とともに聞こえるのは各種セミのコーラス、曲名は「夏盛り」か しかしその森の合唱も、生い茂る深緑の植物も、群襲してくる虻も、男にとっては最もたる問題ではなかった 問題は、此処は何処で、自分は誰なのか、だった 男は頭から紅い命の雫を垂らし、崖下のひしゃげた車の中でただ呆然とするほかなかった もうこうして三日、やつれた怪我人の周りを徐々に鴉が取り囲み始めていた