久々に・・

title ガードレールの切れ目(NO.39)
もう七月も末なのに、ここではまだウグイスが鳴いている
その声とともに聞こえるのは各種セミのコーラス、曲名は「夏盛り」か
しかしその森の合唱も、生い茂る深緑の植物も、群襲してくる虻も、男にとっては最もたる問題ではなかった
問題は、此処は何処で、自分は誰なのか、だった
男は頭から紅い命の雫を垂らし、崖下のひしゃげた車の中でただ呆然とするほかなかった
もうこうして三日、やつれた怪我人の周りを徐々に鴉が取り囲み始めていた